水
24
6月
2009
『弥勒戦争』山田正紀著・ハヤカワ文庫
『神狩り』で日本のSF界に颯爽とあらわれた山田正紀の第二作目。ずっと読もうと思ったままになっていたのを棚から引っ張り出してむさぼるように読む。初期山田正紀の作品の特徴として挙げられるのは、科学ではなく、哲学を物語の中に組み込むことである。
『神狩り』の冒頭シーンは、ヴィトゲンシュタインの薊(アザミ)からはじまり、抽象的な存在である神に、論理という物語の枠をあたえて、つかまえようとする。その緊迫した試みが、最後の最後まで続き、頁をたぐる手を休ませない。
『弥勒戦争』もそうした構造をそのまま受け継いでおり、大乗仏教と小乗仏教の倒錯した関係を在日と日本人、米国人と日本人という関係にあてはめながら、弥勒という一方からみれば救済者であり、もう一方からみれば大量殺戮者という存在に光をあてていく。
非常に残念なのは、この小説がここで力尽きていることである。ものすごく面白くなりそうなのに、というところで、筆をおいている。つまらなくはないのだけれど、『神狩り』を知っているだけに、おしい。
個人的にたのしかったのは、半村良が解説を、読んでいて表情がわかるぐらいに、とても嬉しそうに書いていることである。
半村は、山田正紀を当初、弟子にする心づもりだったらしいのだが、あまりに山田正紀が面倒くさがったため、ついに愛弟子になること(されること)はなかったが、半村は、山田正紀の才能を終生愛することはやめなかった。この解説は、まさに二人の蜜月時の言葉。
